【読了】『Nのために』湊かなえ(自分の中で大切な作品になったので今回は記事にしました)

 
【読了】『Nのために』湊かなえ(自分の中で大切な作品になったので今回は記事にしました)
 
 
この記事のときに、作家の湊かなえさんの本が気になって読み始めてから早一カ月…と少し。
 
 
告白』『豆の上で眠る』『絶唱(全てアマゾンリンク)の3冊を読み終わった後
もうファンになったから湊さんの作品を全部読もう!と大人買いして、
現在出版された順に読んでいっています。
※まだ全部は揃っていないです。
【読了】『Nのために』湊かなえ(自分の中で大切な作品になったので今回は記事にしました)
 
 
その中で2日前に読み終わった『Nのために(アマゾンリンク)という作品が
自分の中でものすごく大切な作品になったので
いつもはこのように↓フセッターというものに書いていたネタバレありの感想を、
今回はブログに残そうと思って書いているのがこの記事です。
(ちなみにこの記事はブログだから少し気合いを入れて書いたけれど、いつもはもっとテキトーです。悪しからず…)

 
 
どんなお話かというと、冒頭の写真の本の帯に書かれていることが全てですね…!
帯を書く人はさすがプロだなあと思います。
 
 
私から言えるのは、まずは鳥好きの方はご注意を、ということ。
「あ、読んじゃいけない…」と思って、実は私も飛ばして読んでいない箇所があります。
そういう話が出てくるということを警戒しながら読んだ方がいいかもしれません。
 
 
もうひとつは、湊さんの作品は『イヤミス』(嫌な気持ちになるミステリー)と
呼ばれることが多いそうなのですが、この作品は私の感想ではイヤミスではなかった!ということですね。
その部分は安心して読んでもらって大丈夫だと思います。
 
 
ネタバレなしの感想は、「とても優しい人たちが出てくるお話だったから癒された」。
そんな感じです!
 
 
2つのモーメントの紹介の下からネタバレありの感想が始まります。
読んでも大丈夫な方は読んでみてください。
…と言っても、あまりブログ向けに書いた文章ではないので読みにくいと思います。
文字の装飾とかも一切していないので…
ごめんなさいm(__)m
 
 
モーメントの紹介その1
『読書のきろく』
読み始めと読み終わりのツイートが入れてあるモーメントです。

 
 
モーメントの紹介その2
『けだまぼろぼろの読了』
本以外にもゲームのシナリオなど、何かを読んだら書いているツイートが入っているモーメントです。

 
 
興味があったらチェックしてみてください。
それでは~!

 
 


 

ネタバレありの感想(と、日記のようなもの)

 
 

まず『Nのために』は、本の帯に「純愛ミステリー」と書いてあったから、よし!と気合いを入れてミステリーに挑むような気持ちで読み始めた作品。
 
 
最初に出てくる登場人物が全員「N」だったり、“ミステリー”の部分にワクワクして半分から最後まで一気に読んでしまった。
 
 
読み終わった瞬間の感想は、「よく考えないといけない」。
 
 
解説に、この作品は湊さんが「立体パズルを作りたいな」と思って書いた作品と紹介されていた。
たぶん読み終わった直後は、パズルのピースは全部揃ったけれど、私の中で組み上がっていない状態だったんだと思う。
 
 
その結果、そのパズルを組み立てるために、読んだ日は朝まで一睡もできずにこの作品について考えた、という強烈な思い出を作ってしまった。
(布団の中で考えては気づいたことを忘れないようにメモする、ということを繰り返していたら外が明るくなってしまった…。)
 
 
一晩かけてパズルを組み立てて気付いたことは、

Nのために

の「ために」がそもそも「愛」だったのだということ。
 
 
この作品のテーマはきっと『愛』だと思う。
それは情熱的な恋愛の愛ではなくて、相手のことを本当に大切に思い尊重するあまりに、「自分なんかじゃ…」と一歩下がって他の人に譲ってしまうような、控えめで優しい”N”たちの愛の話。
 
 
顔がきれいな人に弱いのもあって、西崎さんにとても惹かれた。
成瀬くんに自分が失敗したときは…と話したときの「お姫様」は、すでにその時点で希美ちゃんだったんじゃないかと思う。
「罪を共有してくれ」は、今までずっとはぐらかし続けてきた西崎さんの愛の大告白だったと思うし。
 
 
あんな経験があるのに、決して人のせいにせず、文学の中に答えを求め、辛かった記憶を文学に昇華させようとした西崎さんがとてつもなく愛おしく、抱きしめたくなってしまった。
 
 
西崎さんだけ10年後の様子が出てこなかったんだけど、野バラ荘に戻って、今希美ちゃんに読ませるための作品を必死で書いていて忙しいのだと思いたい。
希美ちゃんのことは、きっと成瀬くんから聞くと思うから。
 
 
希美ちゃんは、最初は自分のことを「一番に」思ってくれる人はいないって言ってたけど、

愛をくれた「人たち」

って最後はわかっていてうれしかった。
あのときNたちはみんな希美ちゃんのことを一番に考えて行動したんだから。
西崎さんも希美ちゃんのために、だったんだよって本当は教えたい。
 
 
希美ちゃんと私は似ているような気がしたのもこの作品が印象深いものになった理由のひとつ。
Nたちの優しさは、男の人特有の優しさな気もしている。
 
 
あとは他の湊さんの作品でもよく教えてもらっているけど、シャーペンのノックの回数の話の部分がまたしても「やっぱり言わないと想いは伝わらない」系の話。
 
 
私も生きているうちに話せるだけ話して、なるべく誤解を解いていきたいよねとも思った。
 
 
Nの中に図々しい人が1人もいなくて、全員好きだと思えた。
これからも何回も読み返すことになりそうな作品。
読めてよかったと思う。
 
 
最後まで残った疑問は、「西崎さんと希美ちゃんが似ている」という部分だったけど、私が希美ちゃんと自分がどこか似ているって思ったり、西崎さんが「僕はかわいそうな子じゃない」って思っていたことから辿って考えたら、読み終わってから2日後に考えがまとまった。
『かわいそうに思われたくなくて必死にがんばっている2人』、なのではないかな。
たぶん私もそう思って生きているからなんとなくわかる。
 
 
かわいそうな部分をアピールしながら暮らしたらみんなから同情されるだろうけど、同情なんてされたくない、自分はかわいそうなんかじゃない、自分は自分の力でしあわせになれる、そんな強がりの部分と、でも自分は「マイナス」だからって一歩引いてしまう部分。
確かに2人は似ているのかもしれない。
 
 
野原のおじいさんはさすが年の功という感じだし、みんなを自分の子供のように思っているから見抜くことができたのだろうなと思った。
野バラ荘も野原のおじいさんもまた、希美ちゃんに愛を与えてくれたNだと思う。
 
 
2人が似ている部分がわかってこの作品の立体パズルが完成して、自分の中でとても大切なものになった。
希美ちゃんを通して、私も自分のことや周りにいてくれた人たちのことを考えて癒されたのだと思うし、「ために」が「愛」だと気付けたことで、身近な愛にもっと気づいて暮らしていけそうなのもとてもプラスなことだと思う。
 
 
解説に、この作品は湊さんがプロ作家になってから一から書き始めた最初の作品だと書いてあった。
その作品が私の中で大切なものになったというのはなんかうれしいなと思う。
この題材で、この内容を書こうと思って完成させてくださった湊さんには本当に感謝したい。
 
 
成瀬くんの「小説の主人公を作者と完全に同一視するような読み方ほど、くだらない解釈の仕方はない。(中略)ただ、西崎の部分もある。」というセリフが、私たちに向けられているような気がしてドキリとしてしまった。
他の作品でも思っていたことだけれど、全部が湊さんじゃないけれど、きっとどこかは湊さんなのだろうと思って読んでいる。
だから私はこれからも湊さんのファンとして作品を楽しんでいきたい。
 
 
それから最後は日記的な記録。
西崎さんの書いた『灼熱バード』はトリの目線で書かれた作品だった。
トリは「ぼく」で、わが家の文鳥ネムイちゃんは女の子で違うのに、ネムイちゃんと重ねて読んでしまって実は最初しか読めていない。たぶんかわいそうなことになることはわかっていたから…。(西崎さん、ごめんなさい…)
でもその前の、最初は自分も同じニンゲンなのだと思っていたところや、窓際にケージを移されて初めは眩しかったけどだんだん暖かくて心地よくなってきた表現など、本当にトリが思っていそうなことで、うちのネムイちゃんは何か困っていないのか、悲しんでいないのか心配になって、早く朝ネムイちゃんを起こす時間になってほしくてしょうがなかった。
 
 
私とネムイちゃんは同じ部屋で寝ていて、いつもはカタっとかカリカリカリッとかネムイちゃんが起きている音がすることがよくあるんだけど、その日に限って全くしなくて、ネムイちゃんの存在を感じたくてしかたがなかった。
だんだん青白くなっていく部屋の中でネムイちゃんのケージのシルエットを見つめていたあのときの光景は、この本とセットになってずっと覚えているような気がしている。

 
 


 
 
以上です!